地図とコンパスでオリエンテーリング

スマホのナビを使えば、どこへでも簡単に行ける便利な社会になりました。が、

「物が豊かになっていくっていうことは
 そういう物がなければ暮らしていけないような
 不便な人間に変わっていってしまうことなんだ」 (内山節「続・哲学の冒険」より)

‥というわけで10月21日(土)、「あません3土イベント」として地図とコンパスを頼りに山の中のポイントを回ってゴールをめざすオリエンテーリングを行いました。
講師は自然環境の専門家で、世界的な冒険家でもあるリック・ブレジナさんです。

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【リック・ブレジナさん】
2004年にカナダから天草へ移住。天草の山や海を知り尽くす自然環境の専門家。MIT卒。英会話講師。パラグライダーやマウンテンバイクなどのアウトドアスポーツを極める。2017年、世界で最も過酷と言われる全長1800キロ(オーストリア→モナコ)の山岳冒険レースX-Alpsにカナダ代表として出場。
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今回のオリエンテーリングには、5歳の保育園児から60代まで、幅広い年代の20人あまりが参加しました。山に入る前に、リックさんからコンパスと地図の使い方の基本を教えてもらいました(地図はリックさんの手作りです)。

わかったような、わからないような‥、ちょっと不安も残しつつ、5つのチームに分かれていざ山へ‥。


山の中に整備された道はなく、時には薮をかき分けながら、地図上のポイントからポイントへコンパスが示す方向に従って進んでいきます。道なき道を行くのは、ほとんどの人にとって初めての経験です。


特に保育園の年長から小学校低学年の女の子たちにとっては、想定外のハードさだったようです。
それでも、お父さんに抱っこをせがむことなく、しっかりと自分の足で歩き続けました。

頼りになるのは地図とコンパスだけ、途中、方角がわからなくなって戸惑う参加者も‥。
そのたびにリックさんがコンパスと地図の使い方を丁寧に教えてくれます。

リックさんの妻、リアンさんも優しくサポートしてくれました。


疲れを忘れさせてくれたのは、山のなかで次々に遭遇する新鮮な光景です。こちらは、イノシシが掘った風呂=ぬたば。初めて見る野生のイノシシの立派な風呂に驚きの声があがりました。


はじめて歩く山の中は不思議なことばかり。どうしてこの木には丸い跡がついているの?なぜ? どうして?子どもたちの質問にリックさんが 一つ一つ豊富な知識をもとにわかりやすく答えてくれます。


最後に、ポイントからポイントへ移動する速さをチームで競うミニゲームに挑戦しました。
子どもたちは一番に戻ってきたのに、お父さんがついてこれなかった残念なチームも‥。
最初はコンパスと地図の使い方がよくわからず戸惑っていた参加者も、何度も方向を確認しながら歩き続けるうちに、自信をもって向かう方向を定められるようになってきました。


全員、けがをすることもなく、無事にコースを歩ききり、あませんの事務所に帰りつきました。午前9時のスタートから3時間あまり、みんなお腹がペコペコ。お昼ご飯は、あませんの応援団、「やさい村」のおばあちゃんたちが作ってくれた卵巻きずし、いなり寿司、具沢山の豚汁、そしておはぎと蒸し饅頭です。おいしかったー!ごちそうさまでした。


今回、道なき道を行くハードなコースでしたが、5歳の保育園児を含め、子どもたち全員が2.8キロの山を自分の足で歩き通しました。初めて出会ったというのに、最後にはみんな意気投合! それぞれに 感想を聞いてみました。
・途中で「来なければよかった、もう山には来ない」と弱音をはきかけていた小学3年のSさんの口からは「また来たい!もっとハードルをあげてほしい!!」・小学3年のOさん:「今度は自分で地図を作ってイベントを開いてみたい」・小学5年のK君:「コンパスが使えるようになったので、自分の知らない道を地図で調べてたどってみたい」・中学1年のK君:「チャレンジをしたらできることがわかったので、これから色々と頑張っていきたい!」。
わずか2時間の山の冒険でしたが、ハードな経験を乗り越えた達成感が子どもたちの自信とさらなる意欲を引き出したようです。


また今回、天草に2週間の短期研修に来ていたカンボジアのロン君(18歳)も参加してくれたのですが、ロン君は「日本語や英語など、言葉ではうまく伝えられないけれど、山に入ったら言葉がなくても色んな人とコミュニケーションができて楽しかった」と話していました。大自然のなかでは言葉がなくても心を通じ合える‥、山というフィールドの可能性を感じました。


最後に、あるお父さんがこんな感想を話していました。「天草の子どもたちの多くは大人になるとふるさとを出ていく。けれど、こうして天草の魅力を知る体験を子どもの頃にたくさん重ねていたら、いずれまた戻ってきたいと思ってくれるのではないか。もっと多くの子どもたちにこうした体験に参加してもらいたい」。

その通りだなと思います。これからもあませんの200ヘクタールの山や耕作放棄地、古民家などを地域のコモンズとして最大限に活用し、広大な自然や素敵な仲間たちとの交流を通じて子どもたちに天草の魅力を伝えていきます!


早速ですが、11 月の第3土曜日、リックさんが今回とは違うコースでオリエンテーリングの第2弾を開催してくださることになりました。今回よりもちょっぴり上級編ですが、初めての方でも無理なく参加できるように工夫して下さるそうです。それまでにリックさんたちと森のビッグ・ブランコを作る計画です。楽しみにしていてくださいね!

(あません:後藤千恵)

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