火事
令和6年10月1日、私たちが拠点としていた旧手野村役場の建物が全焼しました。幸い、けが人はいませんでした。
焼けたのは築九十年、木造二階建て、延べ七百七十平方メートルの旧村役場の建物です。かつては地域の人たちが集う憩いの場だったといいます。長い間、放置され朽ちかけていた建物が、ボランティアの皆さんの力で少しずつきれいになり、月に一度、イベントを開ける素敵な場所に生まれ変わりました。木工品づくりを楽しむ工房も完成間近で、週末喫茶など新たな挑戦も始めようとしていた矢先でした。
警察と消防の現場検証によりますと古い電気配線がいびつな焼け方をしていて、火元となった可能性があるとして検証が続いています。
これまで支援してくれたたくさんの人たちが励ましの声をかけて下さいました。「後藤さん、天草から出ていかんでね」と弁当とリンゴと見舞い金をもって駆け付け、涙を浮かべてくださる八十代の男性もいました。火事が起きたあの夜も、仲間の手料理で笑顔になれました。悲しみの涙よりも先にうれし涙がにじみました。
移住して二年余り、たくさんの人たちと出会い、支えられ、今の自分があることに改めて気づかされました。拠点は燃え尽きましたが、里山の森は今もそこにあり、仲間がいて、天草から次の時代の新しい価値を創造し発信したいという私の思いも変わりません。前を向いて進んでいきます。
(あません理事 後藤千恵)