持続可能なライフスタイル
中井さんはエネルギーをほとんど使わない暮らしをしています。ガスの代わりに七輪を使います。保温ジャーの代わりに発泡スチロールの箱の中に鍋ややかんを入れて、上から新聞紙とタオル、毛布をかけておくと長く保温できます。煮物は余熱で一層、おいしくなりますし、夕食時に飲んだお茶が朝になっても冷めていなかったのには驚きました。玄米の保冷庫はありますが、日常使う冷蔵庫はありません。代わりに、籠に食材を入れて井戸の中につるしておきます。夏の暑いときでも14度くらいに保てるそうです。洗濯は手洗い、古い二層式洗濯機の脱水機だけ使っています。
中井さんの母屋に初めて泊めていただくことになったとき、「何か持っていったほうがいいもの、ありますか」と尋ねたら、「一人一本ずつ、へらを持ってきてください」とのこと。何に使うのかと思ったら、食事をしたあと、椀や皿をきれいにするためでした。中井さんは使ったどんぶりを洗わず、へらでこさぎ取り、きれいにします。お米一粒も無駄にせず、すべて美味しくいただき、洗い物も簡単、というわけです。
禅宗にも、食事のあと、お茶やお湯で器を洗い飲み干す「洗鉢(せんぱつ)」という作法があり、永平寺の正門には、「杓底一残水 汲流千億人」、どんな小さなものでも無駄にしなければ、多くの人の役に立つという道元禅師の教えが刻まれているそうです。環境、食料、エネルギー問題、いずれもあまりにも大きな課題ではありますが、中井さんが言われるように「できる人ができるところから」‥、一人ひとりの日々の小さな心がけがいずれ大きな力となっていくのだと思います。